女性はライフステージによってホルモンバランスが大きく変化し、その影響で日々の健康にもさまざまな影響を及ぼします。この記事では、ホルモンバランスの乱れによる不調の原因や、バランスを整える方法について解説します。
女性ホルモンとは
ホルモンはからだのさまざまな機能を調節する物質です。
ホルモンは一生のうちティースプーン1杯ほどしか分泌されませんが、ごく微量で働き、その数は100種類を超えます。
このうち、女性のからだの成長や機能にかかわる2種類の女性ホルモンがあります。それが卵胞ホルモンの「エストロゲン」と黄体ホルモンの「プロゲステロン」です。
この2つのホルモンは、月経と連動して毎月分泌量が増減します。
エストロゲン
エストロゲンは女性らしい丸みのあるからだを作り、骨密度を保ったり、肌や髪の潤いを保ったりする働きがあり、女性の健康を支える役割を担っています。
また、自律神経を安定させる作用もあるため、からだの健康だけではなく、精神を健やかに保つ働きもあります。
プロゲステロン
プロゲステロンは基礎体温を上げたり、子宮内膜を整えて妊娠しやすいからだにしたりする働きがあります。生理前に基礎体温が上がるなど、からだに変化があるのはプロゲステロンの影響です。
ホルモンの状態を知るには、基礎体温表を付けるとわかりやすいでしょう。ホルモンの分泌が正常であれば、約1ヶ月の周期で低温期と高温期の2層にわかれます。
もし一定の周期で2層にわかれていなかったり、低温期または高温期が続いたりする場合はホルモンバランスが乱れている状態です。基礎体温を付けていると婦人科で診察を受ける際に役立ちますから、毎日の習慣にしておくといいですね。
女性ホルモンの影響によるライフステージ別の変化
女性は女性ホルモンの影響によってからだと心に変化があるため、トラブルや病気もライフステージごとに異なります。
思春期
卵巣から女性ホルモンが分泌されて、初潮を迎える時期です。乳房や乳腺の発達、骨盤の発育などが起こって、女性らしい丸みのあるからだつきになります。また、女性ホルモンが活発に分泌されるため、心身共に不安定になりがちな時期でもあります。
成熟期
成熟期は、18歳頃から30代中頃までの時期を指します。ホルモンの分泌が安定しているため生理不順も起きにくく、妊娠・出産に適した時期ともいえるでしょう。
ただし、子宮筋腫や子宮内膜症、子宮頸がんも多い年代のため定期的な検診が必要です。
30代後半になると女性ホルモンの分泌が徐々に減少し、生理の日数が短くなったり、更年期のような症状があらわれる「プレ更年期」を経験したりする人もいます。
更年期
一般的に更年期は「閉経前後の5年間」と定義されています。
日本人女性の平均閉経年齢は50歳といわれているため、およそ45歳から55歳くらいまでの10年間が更年期に当たります。
ただし閉経年齢には個人差があるため、40代で閉経する人もいれば、50代後半で閉経する人もいます。
更年期は卵巣の機能が低下し、エストロゲンの分泌が急激に減少します。エストロゲンは脳の視床下部の命令を受けて卵巣が分泌します。
ところが、いくら脳が指令を出しても卵巣はすでに機能が低下してエストロゲンが分泌されないため、視床下部がさらに指令を出すという悪循環が生まれます。視床下部は自律神経の調節を行う役目を担っているため、体温調節や、睡眠などさまざまな生理機能に影響を及ぼします。
これが更年期障害のしくみです。
更年期を過ぎると卵巣の機能が停止し、エストロゲンは分泌されなくなります。これまでエストロゲンに守られてきたからだは無防備となるため、生活習慣病のリスクが高まります。
ホルモンバランスが乱れる原因
ホルモンバランスが乱れる原因は主に次の3つです。
加齢
先に述べたように、女性ホルモンは加齢によって卵巣の機能が徐々に低下し、女性ホルモンの分泌が減少します。女性ホルモンの減少によって体内のホルモンバランスが乱れてさまざまな症状があらわれやすくなります。
ストレス
仕事や家庭内の問題、精神的な緊張は心身に大きな影響を与えます。特に女性ホルモンの分泌を指令する脳の視床下部は、ストレスの影響を受けやすいため、ホルモンの分泌が乱れる原因のひとつとなってしまいます。
無理なダイエットや不規則な生活
無理なダイエットや不規則な生活も、ホルモンバランスが乱れる原因です。睡眠不足や急激な体重減少などが起こると、脳は生命を維持するために月経を止める指令を出すためホルモンバランスの乱れにつながります。
ホルモンバランスの乱れによって起きる症状
では、ホルモンバランスが乱れるとどのような症状がおこるのかを見ていきましょう。
生理不順や不正出血、不妊など
ホルモンバランスが乱れると、生理不順や不正出血など、生理周期が乱れることがあります。また、経血の量が減少する過少月経や、生理周期が短くなる頻発月経、出血が8日以上続く過多月経、妊娠をしていないにもかかわらず生理が3ヶ月以上ない無月経などさまざまな症状があらわれます。さらに、妊娠しづらくなるなど不妊の問題に発展するケースもあります。
PMS(月経前症候群)
ホルモンのバランスの変化によって、生理が始まる前に心身にさまざまな症状があらわれることをPMS(月経前症候群)といいます。腰痛や肩こり、便秘のような身体的症状のほか、集中力の低下やイライラなどの精神的な症状などが起こります。
自律神経失調症
倦怠感や動悸、不眠といったさまざまな不調を引き起こす自律神経失調症も、ホルモンバランスの乱れが起因していることが多いです。
肌荒れや大人ニキビ
ホルモンバランスが乱れて女性ホルモンの分泌が減少すると、肌の潤いを保つ働きが衰えます。そのため皮脂の過剰分泌が起きたり、ニキビができやすくなったりするなど肌のコンディションに大きな影響を及ぼします。
ホルモンのバランスを整える3つの方法
ホルモンバランスの乱れが、健康面や美容面で大きな影響を及ぼすことがわかりました。ホルモンバランスの乱れを整えるには、原因を取り除くことが大切です。以下の3つの項目のうち、できることから始めてみましょう。
バランスの良い食事
栄養が偏った食事はホルモンバランスの乱れにつながります。京都ノートルダム女子大によると、朝食を食べない女性は月経痛が起きやすいという研究結果もあります。
食事は、焼き魚に副菜とお味噌汁など、和食中心の栄養バランスのとれた食事を規則正しく摂るよう心がけましょう。
特に女性ホルモンと同様の働きをする大豆イソフラボンを積極的に摂取しましょう。ただし、大豆イソフラボンだけを摂取してもホルモンバランスが整うわけではありませんので、あくまでもバランスの取れた食事が基本となります。
運動習慣
ホルモンバランスを整えるために運動習慣を身に付けましょう。運動は自律神経を活性化させ、ホルモンバランスを整える働きがあります。とはいえ、いきなりマラソンや水泳などを始めると、かえって体の負担になることがありますので、運動に慣れていない方はウォーキングやストレッチから始めてみましょう。
ストレスをためない
ストレスはホルモンバランスを乱す要因ですので、できるだけストレスを発散できるよう努めましょう。現代社会ではストレスのない生活を送るのは難しいですが、散歩をして季節を楽しんだり、好きな音楽を聴く時間を持ったりするなど、日頃からストレスをためない工夫を心がけてください。
まとめ
ここまで女性ホルモンが乱れる原因や女性ホルモンの整え方について解説してきました。女性はホルモンの影響によってライフステージごとにさまざまな変化が訪れます。また、加齢やストレスなどの原因でホルモンバランスの乱れが生じると、PMSや自律神経失調症といった症状があらわれることがあります。ホルモンバランスを整える方法をできることからはじめて、健やかな毎日を送りましょう。